O.P.P.A.I:emergency blow【1:1 20分 おっぱいコメディ台本】
ヒロシ:「はぁ。死のう」
ミク:「なっ」
ミク:聞こえてしまった。通学中の桜並木の下で、そうつぶやいた男の声を。
ヒロシ:「よっと」
ミク:「ちょ、ちょっと」
ヒロシ:「何か?」
ミク:「なに、やってんの」
ヒロシ:「あ、いやどうぞお構いなく」
ミク:「いやほんと遅刻ギリギリだしお構いしたくないんですけど。あんた今物騒なこと言わなかった?」
ヒロシ:「なんだ、聞かれてたんですね」
ミク:「聞こえてなくても徐(おもむろ)に木に縄かけてるスーツの、それも目の死んだおじさんなんて見たらなんとなく想像つくっつーの!」
ヒロシ:「いえ、本当にお構いなく。ささ、あなたはどうぞ、眩く輝かしい青春を送ってください女学生さん」
ミク:「根暗全開の嫌味返してこないでよ。いやいや、どう見たって首吊るつもりでしょ。やめなさいよ」
ヒロシ:「いいじゃないですか。誰に迷惑をかけるわけでもないんですから」
ミク:「現在進行形で、私に、大迷惑でしょうが!
ミク:私帰りもここ通るんだから、夕方になってあんたの死体がぷらーんってぶら下がってんのなんてごめんよ!」
ヒロシ:「はぁ。僕ってば生きてても死んでも迷惑かけてばかりなんだぁ」
ミク:「あーもーうじうじして鬱陶しい!さっさと縄引っ込めてどっかいっちゃってよ」
ヒロシ:「ふっ。女子高生からもウザがられるなんて。やっぱり死のう。あぁ、もう自分に生きる価値なんてないんだぁ。うっうぅぅ」
ミク:「ちょ、大の大人がでかい声で泣かないでよ」
ヒロシ:「女子高生にウザがられたぁぁぁとどめさされたぁぁぁぁもう生きていけないぃぃぃぃ」
ミク:「はぁっ!?最終的に私のせいみたいに言わないでよ!!」
ヒロシ:「女子高生から冷たくされるのがご褒美なんてのは特殊性癖で、普通にめちゃ傷つくんですよっ!!では。よっと」
ミク:「はぁぁぁぁぁっとにもおぉ。遅刻確定コースだねこりゃ。ほらちょっと、おじさん。ここじゃ通りの人の目もあるし、そこの公園に行こ。話聞いてあげるから、ね?」
ヒロシ:「…僕は話すことなんてありませんよ。ありませんけど、君がどぉぉしてもというなら、首つりアディショナルタイムに突入するのもやぶさかではないです」
ミク:「はぁ。めんど。はいはいどーしてもどーしても」
ヒロシ:「適当すぎませんか」
ミク:「早く降りてこないとおいてくよーおじさん」
ヒロシ:「あっ、ちょ、待ってくださぁい!」
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0:近くの公園ベンチ。いったんヒロシを座らせて自販機に水を買いに行ったミクが戻ってくる。
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ミク:「おまたせーおじさん。ほい、水」
ヒロシ:「……ありがとうございます」
ミク:「飲んでちょっとは落ち着きな」
ヒロシ:「んっ んっ はぁ。」
ミク:「んで何があったのさ」
ヒロシ:「その前に」
ミク:「ん?」
ヒロシ:「水の代金、払います」
ミク:「いーよ水くらい」
ヒロシ:「いえ、いくら何でも女子高生に飲み物おごってもらってっていうのは」
ミク:「首吊ろうととしてるのにそんなこと気にすんの?
ヒロシ:「首吊ろうとしてるからですよ。直前に借金してたら、気になって仕方ないじゃないですか。未練ですよ、借金」
ミク:「別に借金ってわけじゃ…まあもらっとくよ」
ヒロシ:「じゃ、これで」
ミク:「ん。あっ」
ヒロシ:「はい?」
ミク:「足りない。170円だから」
ヒロシ:「えっ?150円じゃないんですか?!」
ミク:「おじさん、そんなとこまでおじさんなんだね」
ヒロシ:「ぐっ。いちいち刺さないでくださいよ。はい、20円」
ミク:「ん。で、何があったのさ」
ヒロシ:「その前に」
ミク:「今度は何?」
ヒロシ:「ほんとに話すんですか、その、首をくくろうと思った経緯を。見ず知らずの君に」
ミク:「見ず知らずだから話せることもあるでしょ。ほら、はよぅ申せ」
ヒロシ:「…いろいろ、積み重ねはありました。でも昨日、仕事をクビになったのが原因、ですかね」
ミク:「あーリストラされちゃったんだ。それはまあショックだろうけど」
ヒロシ:「仕事の業績は並。職場内でもめ事を起こしたわけでもない。でも、上司に呼び出されて、自主退職しないかって。
ヒロシ:うっ、思い出したら泣きたくなってきた」
ミク:「なんでそれでクビなの?」
ヒロシ:「実は先週、ちょっとしたアクシデントがあって。通勤電車で、痴漢だって騒がれちゃったんです」
ミク:「え、ちょっとまって離れるから」
ヒロシ:「冤罪ですよ!相手は下半身にピクリとも来ないような枯れたおばさんで、結局警察も証拠不十分でそのまま何事もなく終わったんです」
ミク:「なんだ、良かったじゃん」
ヒロシ:「でも会社は、営業に出る人間が、冤罪とはいえ痴漢騒ぎにあったのは社のイメージを損なうって判断したんです」
ミク:「それで『自主』退職ね~」
ヒロシ:「絶望した。新卒採用からもうすぐ30歳になるってとこまで務めてきた会社に簡単に見放されたことと、あんなおばさんの被害妄想で人生めちゃくちゃにされた事にね」
ミク:「んーまぁ同情の余地は充分にあるね」
ヒロシ:「これがせめて!せめてめちゃくちゃ美人に蔑まれるような目で見てもらえたとか、実際におっぱい触れたとかならまだ良かった!」
ミク:「いやよかないでしょ」
ヒロシ:「じ、実は僕、童貞なんだ」
ミク:「あーね。そんな感じするよ、おじさん」
ヒロシ:「それでもね、30歳になったら魔法が使えるかもしれない、60歳になったら極大魔法が放てるようになるんだって、自分を叱咤激励しながら生きてきたんだ」
ミク:「なんでそっち方向なのよ」
ヒロシ:「それを、それをぉ、触れもしなかったエアおっぱいで、人生パーにされるなんてぇ!」
ミク:「ちょ、でかい声でおっぱい言わないでよ!」
ヒロシ:「もう無理だッ!立ち直れないッ!もう僕の人生はどん底だ!マリアナ海溝より深く堕ちていくしかないんだぁ!!」
ミク:「世界の最深部まで行くほどのこと!?」
ヒロシ:「未来ある若者である君には分からないでしょうね!やることなすこと裏目裏目!良いことの一つもないつまらない毎日を、それでもひたむきに頑張ってきた!でも!なんの報いもない!!出口もわからないのに水圧に押しつぶされるような日々を送っていくだけの重苦しい人生!!もう、明るい未来はないんですよ」
ミク:「いや、ふつーに心機一転、転職しなさいよ」
ヒロシ:「そのための心の原動力がないって話でしょーが!掴めもしなかったエアおっぱいによって叩き落されたこの心を回復するには――」
ミク:「するには?」
ヒロシ:「―――君、おっぱい大きいね」
ミク:「っ!さいってい!人がせっかく親切心で話を聞いてやってるっていうのに!それふつーにセクハラだかんね!きっも!」
ヒロシ:「エアおっぱいで水底(みなぞこ)に沈んだ僕が浮上するには、おっぱいエアーに掴まるしかないんだ!
ヒロシ:そう、まさしく今の僕にとっておっぱいは夢と希望とロマン、そして命さえ詰め込まれた救命胴衣!この日の光さえ届かない深海からまぶしい青空に飛び出るためには、おっぱいが必要不可欠!!マストおっぱい!!」
ミク:「ふっざけんじゃないわよ!だったら、そ、そういうお店とかに行けばいいじゃん!」
ヒロシ:「人生で初めて触るおっぱいは、愛のあるおっぱいでありたい。僕はね、そう思うんだ」
ミク:「なにキメ顔で言ってんのよ!別に愛なんて私にもないし!」
ヒロシ:「いや、君は既にこんなにも僕に優しくしてくれた。見ず知らずの首つり未遂サラリーマンにね。
ヒロシ:僕は今、この優しさと温もりにこれ以上ない愛情を感じている。まるで聖母のような慈愛。そしておっきなおっぱい」
ミク:「ほんっと無理!まじ無理!」
ヒロシ:「後生だ!さきっちょだけ!さきっちょだけでいいから!!それで自殺も辞めるし、明日から真面目に生きていくって誓うからぁ!このとおり!!!!」
ミク:「急に自殺とか重いワード持ち出してくんな!ってはぁ!?ちょ、なに土下座なんてしてんのよ!」
ヒロシ:「お願いだよォ!人助けだと思ってぇ!」
ミク:「痴漢は冤罪かもしんないけど、これは完全にアウトでしょ!女子高生におっぱい触らせろって土下座してるおじさんなんて現行犯じゃん!」
ヒロシ:「それでもっ!掴みたいおっぱいがあるんだ!!」
ミク:「開き直るな変態!勝手におっぱいに幻想を押し付けてないで、現実見ろ!!」
ヒロシ:「幻想?確かに夢もロマンも、哀れでバカな男どもが妄想する儚い幻想なのかもしれない。
ヒロシ:でも君こそ!僕というキモイおっさんを否定したいがために、現実を歪めているんじゃあないのかい?」
ミク:「はぁ!?私の言ってることのどこがおじさんの妄言とおんなじだって言うのよ」
ヒロシ:「おっぱいは―――水に浮くッ!!!」
ミク:「………はぁ?」
ヒロシ:「おっぱいにはッ!浮力がある!!つまり!!僕を人生のドン底から浮上させる力がある!!!」
ミク:「いや、うまいこと言ったみたいなのやめてよ。関係ないから」
ヒロシ:「感じるのは社会の重圧や暗い海底の水圧じゃなくて、包容力マックスのパイ圧がいいッ!」
ミク:「キショ」
ヒロシ:「…そうか。じゃあ、もういいよ。僕はおっぱいという名の生命維持装置をつかむことが出来ず、ただ水面から刺す日光が見せる幻のおっぱいを夢想して、暗い水底にただ沈むのみ。つまり沈殿ってわけだ」
ミク:「おじさん、そもそも人を好きになったこと、あるの?」
ヒロシ:「え?」
ミク:「ちゃんと人を好きになって、告白して、愛し合ってって。おじさんが言う愛のある、そういうこと、ってのは、そういうものの先にあるもんじゃん」
ヒロシ:「それは…」
ミク:「だからさ、ちゃんと仕切りなおして、また頑張ればいいじゃん。ね?」
ヒロシ:「っ!頑張れなんて、言うだけなら簡単さ!僕にはそうするだけの自信も、度胸もないんだ!!だから…」
ミク:「首を吊るっていうの?」
ヒロシ:「おっぱい触らせてください」
ミク:「諦めてないんかい!!」
ヒロシ:「お願いだぁ!もう僕にこんな機会はやってこない!!ここを逃せば僕の人生はノーおっぱいでゲームセット!!その感触もしらないまま、全然タイプでもないおばさんの痴漢冤罪で短すぎる人生のエンドロールが流れちゃうんだよぉ!今なら君は主演女優としてクレジットされる!!」
ミク:「そんな不名誉な名前の残し方でOKする人なんて居るわけ―――いや、いいよ」
0:台詞の間で、土下座するヒロシの向こう側に、公園の入り口に到着した警官の姿を見つけるミク。ゆっくり近づく警官。
ヒロシ:「え!?ほんと!??」
ミク:「その代わり、流石に私も恥ずかしいから、立ったら目をつぶって?心の準備をするから、いいって言うまで目を開けないで」
ヒロシ:「わかった!はい!立った!目つぶった!」
ミク:「じゃ、そのまま両手を突き出して」
ヒロシ:「はい!ってえ?目つぶったままなの?あいやでもそれはそれでいいかも」
ミク:「いい?全神経を手のひらに集中して、周りの音とか気にしちゃだめだよ。足音とか聞こえてもガン無視ね」
ヒロシ:「もっちろん!僕は今、生まれてこの方発揮したことのないほどの最大の集中力をもって、指先の感覚を研ぎ澄ませているよ。遂に僕の心はおっぱいエアーで急速浮上だ!さあ!記念すべきファーストおっぱいのハートフルでぽよんぽよんな感触はいずこに――」
0:ここで警官が手首に手錠
ヒロシ:「ん?なんか手首に冷たくてかたい感触が…おっぱいって暖かくてやわらかいんじゃないの?ってカチャリ?」
ミク:「じゃ、お巡りさん。あとはよろしくお願いしますね」
ヒロシ:「冷たい。硬い。手のひらじゃ、ない。え、なにこれ」
ミク:「もう目あけていいわよ」
ヒロシ:「て、手錠??????」
ミク:「よかったね。話の続きはお巡りさんがじっくり聞いてくれるってさ」
ヒロシ:「そんな、いつの間に!?」
ミク:「さっき公園ついて水買いに行ったとき、自販機コーナーで110番したの。こんなの女子高生の手に負えないし。そもそもあんた死ぬ気なかったでしょ。
ミク:こんなに人が通る場所で、これ見よがしに縄なんて持ち出して。いかにも止めてください~って感じだったじゃん」
ヒロシ:「うっ」
ミク:「あ、お巡りさん。その人めんどくさいけど悪い人じゃなさそうなんで、話聞いたら帰してあげてくださいね。
ミク:あっでも私のストーカーとかになられても面倒なんで、その辺はしっかり言い聞かせといてください」
ヒロシ:「は、謀ったな!僕の心を弄んで!」
ミク:「こんなかわいい女子高生とお話しできたんだから、それで満足しときなさいよ。
ミク:明日からはまっとうに生きるのよー。ハロワとか行って。んじゃ」
ヒロシ:「ま、まって!最後に教えてくれ!君のおっぱい何カップ!?」
ミク:「教えるか、バーカ!」
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