ぬっぽとぅんとそとそ
サシ台本 コメディ10分 女性変更有 その場合はおじさんをおばさんに、お兄さんをお姉さんにしてください
おじさん:「なあ、そこのにいちゃん」
お兄さん:「はい?なんすか」
おじさん:「ぬっぽとぅんとそとそ、やろうや」
お兄さん:「…は?」
おじさん:「ぬっぽとぅんとそとそ、やろうや」
お兄さん:「いや、なんですか?何か探してるなら店員さんに声かけてくださいよ」
おじさん:「ちゃうよぉ、ちゃうちゃう。わいが探しとるんは商品やない」
お兄さん:「なんだこの人。用がないならこれで」
おじさん:「まってぇな!な!」
お兄さん:「なんですか」
おじさん:「ぬっぽとぅんとそとそ、やろうや」
お兄さん:「もう何言ってんのかわかんねぇよこの人。あの!これ以上しつこいと店員さん呼んで通報しますよ」
おじさん:「そんな殺生な!」
お兄さん:「あなた初対面ですよね。しかもここ、どこだと思ってるんですか」
おじさん:「スーパーのお魚コーナー」
お兄さん:「そう。ここは買い物するために来るところで、見ず知らずの人にわけわかんないこと言う場所じゃないんですよ」
おじさん:「逆に見ず知らずの人にわけわかんないこと言う場所ってあるんか?」
お兄さん:「ねぇよ!あーもううっとおしいな。すみませーん!そこの店員さ――」
おじさん:「ちょちょちょ!まった!」
お兄さん:「なんなんだよもう!こちとら苦学生で、タイムセール逃すわけにはいかないんだよ」
おじさん:「ここに29万6800円ある」(懐から封筒を出しながら)
お兄さん:「なっ」
おじさん:「にいちゃんがぬっぽとぅんとそとそやってくれるんやったら、これ全部やる」
お兄さん:「はぁ?あんた何言って」
おじさん:「頼む!一生のお願いや!」
お兄さん:「初対面の人間の一生のお願い軽いな!重みぜんっぜんないな!」
おじさん:「でも、29万6800円は欲しいやろ?」
お兄さん:「怪しすぎるだろ。いやだよそんなの欲しくないし、そもそもあんた何なんだよ」
おじさん:「わいは変な言葉遊び布教おじさん」
お兄さん:「変な言葉遊び布教おじさん!?」
おじさん:「変な言葉遊びを他人に教えることを人生の唯一の楽しみにしとるんや」
お兄さん:「迷惑すぎるだろ。そんなもん公園行ってガキでも捕まえてろ」
おじさん:「そんなことしたら即通報やん」
お兄さん:「今も変わんねーだろ」
おじさん:「いや、ここならいざとなったらレジに直行すれば買い物客として扱われる。セーフやねん」
お兄さん:「こざかしいな、今すぐ突き出してやろうか」
おじさん:「頼むって!ほんまに!」
お兄さん:「しつこいなほんと。そもそもなんなんだよその、ぬっぽなんとかって」
おじさん:「よくぞ聞いてくれました!ルールは簡単」
お兄さん:「おいテメェ、しれっとルール説明に入んじゃねぇよ」
おじさん:「先行が『ぬっぽとぅんとそとそ』のどこかまでを好きに区切って切り上げる。後攻は、切り上げられたあとの残りを続けて言う。これだけや!」
お兄さん:「聞いたことねぇよ」
おじさん:「そらわいのオリジナルやからな」
お兄さん:「質悪いぜ。昔の言葉遊びの文化継承とかですらねーのかよ」
おじさん:「ほな始めるで」
お兄さん:「待て待て待て、誰もやるなんていってないだろ」
おじさん:「5分かからんって、やってくれるだけで29万6800円や!お得やろ!」
お兄さん:「だからそれが怪しすぎるだろ!その金綺麗な金じゃないだろ、胡散臭い」
おじさん:「失敬な!これは先日、ワイのオリジナル言葉遊び、『ゴライアスは泣いた』で賭けをして勝った時にもろた金や!正真正銘の真剣勝負やった!」
お兄さん:「賭けてんじゃねぇか!」
おじさん:「わかった!じゃあ勝負受けてくれたら前金で29万6700円やるわ」
お兄さん:「残り100円じゃねぇか!いや、やんないって。もういいでしょ、それじゃ」
おじさん:「ほんまにええんか・・・?」
お兄さん:「そんな金いらないって」
おじさん:「ちゃう。金やない」
お兄さん:「は?」
おじさん:「ククク・・・お前の妹は預かった」
お兄さん:「いねぇよ妹」
おじさん:「え?ほなさっき攫ったのは誰なんや」
お兄さん:「おまわりさーん」
おじさん:「冗談やん!ジョーク!変なおじさんジョーク!!」
お兄さん:「はぁ・・・もういいでしょ。じゃ、この辺で」
おじさん:「ほんまにええんか・・・?」
お兄さん:「そのくだりもういいって」
おじさん:「にいちゃんが帰ったら、次はそこで鮭の切り身みてるおいちゃんに声かけるで」
お兄さん:「なっ!」
おじさん:「あー今おいちゃんと目ぇがおうたな!」
お兄さん:「めっちゃ無言で首降ってるよ。いや、気持ちは痛いほどわかるけど」
おじさん:「ほら、人助けやと思て」
お兄さん:「クソマッチポンプじゃん」
おじさん:「5分かからんって、ほんま!」
お兄さん:「あーもうわかったよ。やってやるよしつっこいな」
おじさん:「ほんまか・・・ほんまか兄ちゃん!」
お兄さん:「このままだとあんたずっと付きまとうだろ。もうさっさとやって終わりにする。その代わりもう二度と声かけてくんなよ」
おじさん:「ほんまありがとう!!!ほなさっそくやるで!」
お兄さん:「ああ、さっきの変な言葉を、区切った残りを続けて言うだけでいいんだよな」
おじさん:「ぬっぽとぅんとそとそ、な。でも、間が1秒以上空いたらあかんで。これは、相手との相互理解を深め、互いのことを思いあい、呼吸を合わせることで魂のレゾナンスを感じるゲームなんや」
お兄さん:「なんで初対面の人間捕まえてやんだよ」
おじさん:「最初は合わん息があっていくのがええんやないの」
お兄さん:「もういいよ、始めてくれ」
おじさん:「ほなワイの先行でいくで!ぬっぽとぅん」
お兄さん:「とそとそ」
おじさん:「ぬっぽ」
お兄さん:「とぅんとそとそ」
おじさん:「ぬっぽとぅんとそと」
お兄さん:「そ」
0:以下、この要領で好きなだけやってください
お兄さん:「待て待て待て、もういいだろ、いつまでやんだよ5分かかんないって言ったろ」
おじさん:「ふふっ・・・ああ、これで満足や」
お兄さん:「なっ、おいおっさん!体が透けて・・・」
おじさん:「これでもう、思い残すことはない・・・」
お兄さん:「おっさん!ちょっと待て!」
おじさん:「金はちゃんとほんまにあるから、安心して受け取ってな」
お兄さん:「そうじゃなくて、ぬっぽとぅんとそとそ、って、なんなんだ!?」
おじさん:「ああ、それはな――」
お兄さん:「嘘だろ。消えちまいやがった」
おじさん:「あの・・・」
お兄さん:「あなたは、鮭の切り身を見ていた人!あなたも、今ここにいた変なおじさん見ましたよね?まさか幽霊なんてこと」
おじさん:「ええ、見ていました」
お兄さん:「!よかった、ちゃんと他の人にも見えてたんだ。あの、今のおじさんどこに行ったか、あなたにはどう見えて――」
おじさん:「そんなことよりも、貴方にお伝えしなければならないことがあります」
お兄さん:「は?」
おじさん:「実は私こういう者でして」
お兄さん:「名刺?これはどうもご丁寧に・・・って、あんた!」
おじさん:「ええ、私は変な言葉遊び根絶おじさん」
お兄さん:「変な言葉遊び根絶おじさん!?」
おじさん:「世にはびこる変な言葉遊びを根絶することを喜びとするものです」
お兄さん:「ふっざけんなマジもんのマッチポンプじゃねぇか!さっきのと知り合いかあんた!」
おじさん:「残念ですが、あなたには、ぬっぽとぅんとそとそのことを忘れてもらいます」
お兄さん:「積極的に忘れたいくらいだよ!なんにも残念じゃない」
おじさん:「しかし、忘れるためにはまじない手数料として59万3600円お支払いいただく必要があります」
お兄さん:「たっか!!さっきもらった額の倍じゃねぇか!」
おじさん:「お支払い、いただけますね」
お兄さん:「払うわけないでしょ。ほら、さっきもらった29万6800円は返すから、もう関わらないでくれ」
おじさん:「ふむ、では忘れるのも半分まで、ということになりますね」
お兄さん:「いや忘れさせたいのはそっちだろ、ちゃんと全部消せよ」
おじさん:「これはやる気の問題ではなくて、この金額がまじないにどうしても必要なのです」
お兄さん:「なんだそのシステム。知らないよもう。それじゃ、俺はこれで」
おじさん:「忘れろサンシャアアアアアアアアイン!!」
お兄さん:「うぉまぶし!」
おじさん:「ふふふ、ではこれで」
お兄さん:「あ、おい!またすぅっと透けて消えやがった。幻でも見てたのか・・・?まったくなんだったんだ、ぬっぽとぅん―――あれ?なんだっけ、ぬっぽとぅん…ダメだ、思い出せない!なんだこのもやもやは!そもそもぬっぽとぅんの時点でなんなんだ!?」
おじさん:【ナレ】「その後、彼は半端なまじないの結果、逆に忘れることのできなくなったぬっぽとぅんが、のどにささった魚の小骨のように気になり続けた。そして、一週間後――」
お兄さん:「あのぉ、すみません。いや、怪しいものじゃないんです。ただ5分ばかりお時間を・・・。実は、ちょっとした記憶障害というか、思い出したくても思い出せないことがあって、思い出すためのきっかけを探してるんです。はい。突然すみません。こんなこと聞くのも変だってわかってるんですけど・・・ぬっぽとぅんって、知ってますか?」
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